この記事は、巨匠ピアニストリサイタル 内田光子の続編です。併せてお読みください

ピエール=ローラン・エマール 3/8 (木)

私がフランス人ピアニストピエール=ローラン・エマールを知ったのは2012年、

大学院時代の友人のお勧めで、Lincoln Center の Markin Concert Hall へ彼のソロリサイタルを観にいった時です。

当時は彼がリストセレクションを数多く弾いていたのを覚えていますが、
今回のカーネギーホールでのリサイタルでは
リストをはじめとし、メシアンやベートーベンのハンマークラヴィーアソナタなど
とても濃く盛りだくさんの内容をご披露されました。


プログラム 3/8 8時

1: オブコフ Creation d’Or (創世)

2: オブコフ Relevation (黙示録)

3: リスト 灰色の雲

4: リスト エステ荘の噴水

5: メシアン 鳥のカタログより ダイシャクシギ

6: スクリアビン ピアノソナタ五番

途中休憩

7: ベートーベン ハンマークラヴィーアソナタ


今回は一番から六番までぶっ通しの第一部で

後半はベートーベン一本。

とはいってもハンマークラヴィーアはそれだけで45分以上かかりますので

バランスのとれた内容となりました。

オブコフ、リストの灰色の雲、メシアンは

不協和音をたくさん用いており、ベートーベンや

ショパンなどの綺麗な音楽を意識している人には馴染みにくいかもしれないのですが、

曲の題からしても、ストーリー性があってとても興味深いものばかりです。

 

風変わりなプログラムの流れ

こう思うのは私だけかもしれないのですが、今回Aimardさんは

オブコフの初め2曲からリストへ拍手の空白なしに進みました。

灰色の雲を知らない人は、ほとんど曲の移り変わりに気づかなかったのではないでしょうか。

気づけば、エステ荘の噴水になっていた!!という感じです。

エステ荘の噴水はリストの中でも印象派の作曲スタイルで

7thコードがたくさん入っていてとても綺麗。

オリバーメシアンの曲は、鳥が大好きで

富士山にも一度訪れたことがあるくらいの登山家

だった作曲者が作った鳥の歌声集から。

大学時代にこの曲集についてのアナリシスをしたことがありますが

リズムが本当に鳥の鳴き声みたいです。

一日中聞いていられるかと言われると正直考えてしまいますが

とても勉強になります。

 

そこからスクリアビンのソナタに突入。

このソナタはスクリアビンのソナタの中でも一番印象派の要素が強いものなので

Aimardさんは何かこの二曲に”かける”ものがあったのでしょうか。

 

気づいたら第一部が終わっていた

 

と感じたオーディエンスは

私だけではなかったと思います。

 

後半戦はスタミナ勝負

ベートーベンのハンマークラヴィーアは、

第一部とはガラリと変わった曲風。

この繋がりはなんだったのでしょうか。

時折半腰になってフォルテを弾いている姿は

私の5年前の彼の印象と全く違いました。

フランス人であるため

ここまで感情的に演奏されるとは!

 

繊細でバランスのとれたクリアーなサウンド

内田光子さんとは対照的に、AimardさんはNY Steinwayを使用。

そのためか、音はわりとブライト(私が座っていた場所にもよったかもしれません)

感情的に弾いているのに全体的なバランスが取れた演奏でした。

特に旋律の音の出方がとても綺麗!

さすが印象派を得意とされている演奏家です。

そして、そのフォーカスしたサウンドが

不協和音を用いた現代曲にもとても映えます。

ステージを上がってきたり、お辞儀をする姿を見て

本人に実際にお会いしたことはありませんが、

とてもハンブルな印象を受けました。

Pierre=Laurent のその他のおすすめ曲

今回のリサイタルでは披露されなかった曲で特におすすめは、

残りのオリバーメシアンの鳥のカタログの曲とジョージリゲティのエチュードです。

Ligetinのエチュードは、現代作で不協和音を多く取り入れ、当時ではかなり画期的

今までピアノをこんな風に演奏してみようなんて思ってもみなかった人たちが多かった時に作曲され

昨今でも技術的に高レベルを要する曲ばかりです。

一度是非聞いてみてください。

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